project storyプロジェクトストーリーspecial
技術と信頼で開いた、海外市場の扉。
星和電機の技術を世界に届けるため、異国の地で信頼を築き上げ、確かな成果を実現した海外プロジェクトストーリー。

project member

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- S.K.
- 社会システム事業部
技術部所属
担当
電気電子情報工学科卒
多様な情報を社内外に橋渡ししながら、プロジェクトの潤滑油として機能。現在も関係者との連携を図りつつ、道路情報板の改善業務に取り組んでいる。
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- K.T.
- 社会システム事業部
技術部所属
副事業部長
電気工学科卒
プロジェクトの発起人であり、海外市場開拓をリードし全行程をとりまとめた。現在、道路情報板関連の製品やシステム開発・設計を統括する部長として、管理・監督業務に従事。
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- M.O.
- 社会システム事業部
技術部所属
主任
応用生物学部卒
プロジェクトでは仕様打合せや現地対応に注力し、システムの設計・開発を担当。現在も道路情報板のソフトウェアの開発担当として最前線で活躍。
episode. 01

日本の技術を世界へ、海外市場への第一歩。
K.T.プロジェクトの始まりは2010年頃です。当時、日本の道路インフラ市場が成熟期を迎えていることに危機感を持っていました。もしそうならば我々の技術を活かせる新たな市場を探す必要がある。そう考え海外進出を模索し始めました。
S.K.当時は社内に海外案件の実績がほとんどありませんでしたよね?
K.T.その通りです。まずは情報収集から始めました。その中でODA政府開発援助案件なら、日本の技術を海外に展開するチャンスがあると考え、人脈を駆使して情報を集めたり、さまざまな資料を調査したりしていました。そして月日が経った2017年にある設計コンサルタント会社からネパール初のトンネル建設プロジェクトがあるという話を聞きました。
M.O.カトマンズとインドを結ぶ幹線道路上のナグドゥンガ峠ですね。交通渋滞の解消が課題になっていた。
K.T.そうです。あと、この頃にフィリピンのODA案件の話も同時期に入ってきました。もしこれらのトンネルに星和電機の照明や警報設備を導入できれば、新たな市場を開拓できる。しかし、海外案件は未経験であり、社内の反応も慎重でした。「本当に実現するのか?」という懸念の声もありました。
S.K.その中でプロジェクトをどのように進めていたのですか?
K.T.過去に行ったことがないためにすべて手探りでしたが、絶対に成功するという強い信念を持って挑戦していました。社内が慎重になるのは海外の実績がなかったので当然の話で、想定の範囲内でした。当時の立場もありますが、こういった大きなチャレンジができるのが星和電機のいいところです。勝手がわからないことも多かったため、プライベートの人脈で海外に住んでいる方に現地のドライバーをお願いするなんてこともありました。
episode. 02

異国の地で、技術と信頼を結びつける。
K.T.ODAプロジェクトは国内の商習慣と違い独特なものがありますし、言語の壁や文化の違いに直面します。例えば、ネパールやフィリピンの現場では、日本の当たり前が通用しないことも多かったですね。
S.K.私は細かく質問される印象があります。「この仕様は本当に必要か?」とか「もっと簡略化できないか?」とか。日本の基準では当たり前でも、コストや技術の違いから受け入れられないことも多くて。
K.T.そうですよね。日本では自動化やオートメーションといった機能をつけると非常に喜ばれ、もはや一般化していてある種そういったことが当たり前になっています。ところがODAプロジェクトになると、自動化やオートメーションをすると現地で働く人の仕事がなくなるという考えになる。だから、便利になるとか早くなるとか簡単になるといった機能はあまり喜ばれません。その地の文化にあった品質にすることが重要です。
M.O.あと、現地の法規制も大きな壁でしたね。設計に関する基準が曖昧だったり、逆に日本では考えられない規制があったり。現地の企業と何度も協議を重ねながら調整しました。
S.K.私が一番大変だったのが英語ですね。技術的な内容を正確に伝えようとすると、普段の会話とは別のレベルでの英語力が必要になります。私はGoogle翻訳をかなり活用しました。これほど翻訳ツールに頼ったのは初めてでした。
M.O.私も現地スタッフとのコミュニケーションには苦労しました。図面や仕様書を日本語から英語に翻訳してもらうんですが、その英語が本当に伝わっているのかが不安でした。実際、現場で細かいニュアンスの違いを指摘されることもありました。
K.T.確かに。技術的な話をするときは専門用語も多いですし、誤解が生まれないように慎重になりますよね。でも、現場に行って実際に顔を合わせると、言葉だけでなく表情やジェスチャーでも伝えられる。現場の雰囲気や温度感を感じながら相手を信頼して取り組むことがひとつの解決策になりますよね。
M.O.そうですね。他にも操作画面を直感的にわかるように設計するなど色々ありましたが、チームで知恵を出し合いながら一つひとつ課題を乗り越えられました。これまで国内では経験できなかったことばかりでしたが、その分、成長を実感できる機会でもありました。

episode. 03

人と人をつなぐ力、
それがプロジェクトを成功に導く。
K.T.このプロジェクトの成功の鍵は、やっぱり“人”だったと思います。特に現地の方々や日本からの関係者との信頼関係が重要でした。相手の文化や考え方を理解しながら、柔軟かつスピーディーに対応していく姿勢が求められました。
M.O.設計や開発でもそういった雰囲気はありました。営業現場ではどうでしたか?
K.T.商談ではその場で機転を利かせながら、どんどん決めていくようなスキルや、事前の下調べみたいなものは必須でしたね。特に最初の頃は、あらゆる情報を頭に入れて商談に臨み、図面が求められそうなときは事前につくっておき「もうできていて、今日持ってきています。」みたいなことをすると「もうこのまま使いましょう。」なんてこともありました。あと、柔軟性やスピードが大切な理由として、仕事のやり方が違うというのがあります。日本では物事を決めてからスタートすることが多いですが、海外案件では走りながら決めることが多いので、どんどん対応していかないと商機を逃すことになります。走りながら対応して信頼を勝ち取っていくようなイメージですね。
S.K.私は現場に直接行く機会はなかったんですが、現地からの問い合わせ対応はリアルタイムで行いました。時差もある中で、迅速かつ的確に返答することで信頼を積み重ねられたかなと感じています。
M.O.私はネパールには行っていないのですが、フィリピンの現場には何度か足を運びました。やはり直接会って話すことでコミュニケーションの精度がぐっと上がりますね。ネパールも直接行っていたら、もっとやりやすかったのかなとも思います。
K.T.現場に行くと現地の生活や文化にも触れられるんですよね。ネパールもフィリピンも同じですが、移動中に見える街の風景や人々の暮らしを間近に感じました。そんな環境で自分たちの作った設備が活躍すると思うと、やっぱり誇らしい気持ちになります。日本から約5,000キロ離れたネパールという異国の大地に星和電機のトンネル照明や道路情報板が設置された姿を見たときは込み上げるものがありました。
S.K.あと、現場を支えてくれる人たちへの感謝も忘れられません。彼らがいなければ、このプロジェクトは成り立たなかった。お互いに支え合うことで、より良いものを作ることができたんだと思います。
episode. 04

海外での経験を力に、未来へ進む星和電機の挑戦。
K.T.このプロジェクトを通じて、海外事業の可能性を改めて感じました。もちろん課題もありますが、星和電機の技術を世界に広げるチャンスでもあります。
M.O.私自身、今回の経験を通してソフトウェアだけでなく、ハードの知識や現場での対応力も身についたと感じています。国内だと専門範囲を説明することが多いですが、海外だと星和電機の代表としてすべてに対応できないといけません。今後、もっと広い視野を身につけて、プロジェクトで今回よりも責任ある立場で携わりたいです。
S.K.私は英語をもっと勉強したいと思いました。将来的には、自分一人でも海外の関係者と直接交渉できるようになりたいです。そのためにも今回の経験を糧に、さらなるスキルアップを目指します。
K.T.私たちの取り組みが、今後の海外プロジェクトの礎になればと思っています。まだまだ道のりは長いですが、一歩ずつ確実に進んでいます。実際、今の段階で何件かの海外プロジェクトの話がきていて、星和電機の新たな事業となる様に育てていきたいと考えています。
M.O.はい。次のプロジェクトでも、今回の経験を活かしてチーム一丸となって頑張ります。
S.K.世界のどこかで、また星和電機の製品が活躍する日を楽しみにしています。